As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
きっと、



「こんなもんじゃない」


「まだ自分はできる」って…



そう思っているんでしょう?






「…頑張ろうね、お互いッ!!」




私は「バシッ」と…中道の胸を叩いた。





「いって~…、信じらんねー、バカ力……。」



中道は顔を歪めて…


苦笑する。





「……楽しくいこう、高校生活なんてあっと言う間だもん。」




「…ん……。」







夏の夜は……




人をちょっと強くする。




名残惜しむように……




熱く、熱く……




身を焦がす。




中道…、



アンタは気づいてないかもしれないけどね、



『ありがとう』のひと言が……



また、私に勇気をくれたんだよ。




いつも憎まれ口ばかりだった私が……



アンタに優しくなれる、そんな小さな勇気を……。



「じゃあ、私こっちだから…。」



「…うん。」




君と別れるいつもの場所で……




私は一旦足を止める。





「…じゃあ。」




そう言って……



顔を上げると。




中道は何も言わずに、俯いていた。



「……?どうした?」



「…送ってく。」



「…え?」



「お前ん家まで送ってく。」



「……?なんでよ、何か企んでないよね?」



「だって変なのに捕まるかもしれないし。」



「アンタみたいなおとこに?」



「ひでっ…」



「…心配してくれてんの?…ありがとね。」



「…そんなんじゃねーよ…。」



「……。仕方ないから、送られてあげるよ。」






なんていう顔してるんだろう。




じわじわと手に握る汗に……




惑わされそうになる。



< 166 / 739 >

この作品をシェア

pagetop