As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
始業式……
2学期の始まり。
クリーニングされた夏服に、私は袖を通す。
少し寝坊ぎみだったから…時間がない。
伸びた前髪をねじって、パッチンピンで留めた。
今日はこれだけ。
「……まあ、いっか。」
結が手入れした朝顔のカーテンの隙間から光が差し込む。
……快晴……。
「…っしゃー!結、早く行こっ。」
私は無駄な気合いを入れて…
飽きれる結を引き連れて、玄関を出た。
……と、
「…おはよ。」
門を出たところで、背後から声。
「………?」
振り返ったそこに……
佳明が立っていた。
「…おは…おは…?」
驚いて、言葉が出ない。
「…なんだ、朝から見せ付けるなあ…!じゃあね、おふたりさん♪」
「…えっ、ちょっと待って。結~?」
…が、予想以上に逃げ足の速い結のその背中は…
あっという間に小さくなった。
「…おー、さすがは元陸上部。結ちゃん速いわ。」
呑気に笑っている場合…?
今日、今この瞬間まで……
私達は会うことも、電話も、メールすることさえなかった。
理由はひとつ。
佳明が言い出したことがきっかけだ。
それって…
今すぐ答えを出せってこと…?
確かに夏休みがあけるまでにって言ってたけど、明けた瞬間って!
「…朝練ないし、天気はいいし……、つい、来ちゃった。」
屈託ない笑顔を向けて、私の手をとる。
「……貴重だよなあ、一緒の登校!」
「…家の方向違うしね。」