As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「………俺さあ…、そんな潔くないから、綺麗さっぱり忘れらんねーし、同じクラスだからどうしても気になっちゃうだろうな。だから……、今まで通りなんて…、できないかも。」



「……え……?」



何言って……




「…悪かったな、振り回して。これで…ちゃんと諦める。俺も男だ、あいつに…任せてやる。でも…、泣きたくなったら俺んとこ来いよ。泣き場所になってやるから。…なーんて、往生際悪すぎ…。」



「…………。」




「…じゃあ、スッキリしたことだし…、もう行こうかな。」



「……もう…行くの?」



「ん。これ以上長居無用。振られたとはいえ、好きな女には変わりない。手ぇ出しちゃう前に、退散します。」



中道はおもむろにたちあがると……


ようやくにこっと笑ってみせた。





「ゆーうっ。」



「…?なに?」



「がんばれよ、陸上も、恋も……。」



「…うん。」



「…俺も…、来年こそは甲子園いけるようにがんばるから。てか…、その前にレギュラー勝ち取るのが先か。」



「…努力は必ず報われる。そう…、信じよう。」



「…うん。…あーあ、もう一回チューくらいしておけば良かったな。」



「…はあ……?!」



「…素直になるって難しいけどさ…、いざなってみると、せきをきったかのように…感情が溢れてくるもんなんだな。」



「…そうなんだ……。」



これが……


中道の本心ってこと?


意外に……


かわいい一面。



「…なあ、思い出に一回しておく?」



「…えっ。何を…?」



「キス。」



「……………。」







「…馬鹿じゃないの?!仮にも自分を振った女に、そんなこと言う人いる?」



「いるよ、ここに。」



「ホラ、俺を佳明だとおもってさ。」


「…アンタ…、なんかキャラ崩壊してない?」



「…そんだけ必死だってことだよ。…ったく、最後まで伝わらねーし。」





……最後……?





「…しょーがないか、お前だしなあ……。」




再度しゃがみこんだ中道の顔は……



私の目の前。






「スキあり。」











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