As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
屋上で。
予鈴が鳴るのを聞き終えて……
私はようやくその場から離れた。
教室のドアに手をかける。
一瞬の緊張感…。
それをゴクリと飲み込んで、
………扉を開いた。
「…きたっ。」
一旦目が合いかけた女子生徒が…、視線を逸らす。
「…………。」
さっきよりも……
重苦しい空気。
「…柚、授業始まるよ。」
足がすくんで立ち尽くす私に……
律が駆け寄ってきた。
「…りっちゃん。」
「…早く座ろ。話は…それから。」
律が手を引き、私の席へと導く。
「…りっちゃん、私……」
「…アンタはちゃんと…けじめつけたんでしょう?なら、堂々としてりゃあいい。」
律……?
何で知ってるの…?
律はわたしを椅子に座らせると……
そっと耳打ちした。
「…屋上で…アンタが男にキスされてたってすごい噂になってる。」
「…………。」
嘘……。
本当に、中道の言う通りに……
「……中道…。ねえ、りっちゃん、中道は?」
教室に……
姿はない。
「…動揺するな。そんな態度に出して…。相手は…中道なんだね。」
隠し通すなんて…無理だった。
私は黙って首を縦に振る。
「素直でよろしい。中道ならさっき教室に戻って来たけど…、またどこかに行ったみたい。」
「……そう。」
一体……
どこへ?
「キスされた感想は?」
「………!」
「…アンタが黙ってキスされるタマか?」
「………。」
「……なんて…、驚いてそれどころじゃなかったって顔だね。」
「……うん。」
「…アンタが悪者になるか、中道が悪者になるのか……わからない。でも、あいつがそういう覚悟を持っていたってことだけは…認めてやりな。」
「…………。」
「…周りが見えなくなるくらい、アンタしか見えてなかった。馬鹿な奴だね。」
律がそう言うか言わないかのうちに……
ガラッ!!
…と大きな音を立てて…
ドアが開いた。
一斉に……視線が集まる。
「……中道………?」
入ってきたのは、紛れも無く中道。