As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
皆が驚くのも無理なかった。
なぜなら顔のいたる所が赤く腫れ上がり…、
口の端が切れて、血がうっすらと滲んでいる。
「…中道、お前喧嘩でもしたんか?」
ひとりふたりと周りを囲み……
チラチラとこっちを見る。
まさか……
本当に………?
「…いーや、自販機でジュース買って戻ろうとしたら予鈴がなって……慌てて階段走ったら、大コケした。…舌噛んで、血ぃドロドロ。」
「うげっ、マジだ。」
「…でも炭酸は死守!落とさず持ってきた。」
中道はフルタブを開ける。
……が、
缶からは液体が噴き出し……
中道の手からポタポタと溢れ落ちた。
「…どこが死守だって?」
笑いが起きて……
場の空気が和やかになっていく。
「…うわ…、ベトベト。。手ェ洗わねーと。」
くるりと回れ右して歩き出すあいつの背中に……
「…さっき上原とキスしてたのって、お前じゃねーの?」
一人の男子が投げかけた。
「マジ?やっぱりそうなん?うわー、ダブル不倫?」
そして…次第に悪ノリする生徒達。
「上原ぁ、真相は?」
「柚、里中くんと付き合ってるんでしょ?どうなってるの?」
矛先が…
私に向かう。
聞きたかったと言わんばかりの質問攻め。
「…あやしいとは思ってたけどね、二人仲良かったし。でも……最低じゃん?お互い相手いるのにさー……。」
「……それは……」
なんとか言い返さなくちゃ…!
「ちょっと待て。言っとくけどそいつは被害者だからな?」
……中道……?
「いつもの軽~いノリでキスしたら…、もちろん反撃されたし。」
……え?
「思い切りグーでパンチ!ホラ、見ろよこのほっぺ!見事に顔に入った証拠。」
ケタケタと笑ってのける中道。
「…でもさ、普通ノリでキスするか~?」
「いや、それがさ…、同じ顔してるもんで『あいつ』に見えちゃって。からかうつもりが失恋したての俺にはうっかりかわいく見えてしまってだな…。」