As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
高校までは、歩いて20分足らず。



黙々と歩みを進めるが…、




私の右隣りには…大きな違和感。



いつもは一気に上りきるこの坂も……



話し相手がいないと、何だか息切ればかりが気になる。





調子が狂う。



……結に聞いてみなくちゃ。



きっと気づかないうちに……



何かやってしまったのかもしれない。



わだかまりが残る朝ほど気分が悪い日はない。



この空の色も、この空気ですら……


私の心情をそのまま表しているような気さえしていた。



そうだな、例えば……



昨日食べたプリンが結が買ってきたものだったとか?



もしくは黙って借りたシャープペンがないことに今更気づいて…?



いや、どれもこれも……



ピンとはこない。





「…謝るしかない!」



たどり着いた答えはなんとも単純なもので…、私らしいと言えばそうなるだろう。



結論がでたらこっちのもの。



後は鼻唄を唄いながら……



嫌な空気を払拭していく。






校門をくぐり抜けたところで、



見慣れた『ベリーショート』が見えた。




周りの女子生徒より頭一つ分出ているその人は……



「りっちゃ~ん!」



頼れるオンナ・落合律だ。




「…おはよ。あれ、結は?休み?」



「ううん。先行った。」



「珍しいね。」



「…ってか、初めてかも。」



「…そうなんだ?」



「…ねえ、律…。」



「…ん?」



「結から何か聞いてない?」



「…何かって?」



「…う~んと…。私と喧嘩したこととか…?」



「喧嘩したの?」



「え、う~…ん。どうだろ?」



律は困った表情を浮かべた。




「あんた達はどうして私を間に挟むかなあ……。」



「…結も何か言ってた?」



「…さあね。自分の胸に手ェあててよ~く考えな。」



「…いじわる。」


「何とでも言って。まあ、がんばれ。」



「………?」




なにさ…



何を知ってるっていうの…?



やっぱり結本人に聞く他ないのか……。




下駄箱から靴を取り出す。



「………。」




手に持ったピンクの傘を結の下駄箱に入れると…、
長い足でさっさと前へ行く律を小走りで追いかけた。



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