As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「我慢強いくせに、たまにこうなる時があるんだな。」



「そりゃ…私だって悩みくらいあるよ。」



「…あるようには見えねーな。…例えば?」



「………。」



「…女らしくないところとか?」



「…違う。」



「…じゃー授業中寝ちゃうこととか?」



「…それは不可抗力。」



「じゃあ、何だよ。」


「………。たとえばさ……」



何でこんな奴にこんなことって思うけど……



「例えば、今まで手にとるようにわかっていた人の気持ちが急にわからなくなってきた…とか。」



けど、
誰かに聞いて欲しかったのかな。



「…それって俺のこと?」



「…何でそうなる。」


「違うんだ?」



「アンタの事は最初から最後までわかんないよ。」



「最後って…、まだ2か月くらいの付き合いじゃん。」



「そうだけど!中道のことなんて…別にどうでもいいし。」



…しまった。
言い過ぎ……。



「へぇ…、ほ~…。ふ~ん。」



「…………。」



怒ってない?
怒らせてない?



「…双子ってさ~…、悩みまで似てたりするのかな。」



「………?」



「俺が双子だったら…、そんなこと考えそう。」



「深読みし過ぎ。結は…私とは違うよ。」



「…ふーん。」



「性格も違う、好きなものも違う。」



「……。好きな人は?」



「……。知らない。好みが違うから…、違うんじゃない?」



「へー……。なら、分からないことがあってもおかしくないじゃん。正反対なんだろ、全部。」



「そこまでは言ってない。でも…、そうかも。」



「…なら簡単じゃん。聞いてみれば?」



「…なにを?」



「わからないことがあるんだろ?」



「…うん。」



「なら、聞いてみりゃいい。」



「…でもさ、何だか…怖いんだ。」



「…何で?」



「私たちって何もかも違うようでいて…、それでも同じものを夢見たり欲しがったりすることがあるから。それもホントは違っていたら…。」



「………。考えすぎはお前の方だな。」




「ねえ。中道。」



「…ん?」



「あんたに夢ってある?」



「……考えたこともないな。」



「私には…、私たちにはあるよ、夢。」



「……へぇ。」



「ウチ、美容室してるの。」



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