As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…らしいな。りっちゃんに聞いたことある。」



「その店を…、二人で継ぐこと。専門学校に行って…、美容師になって、東京のオシャレな美容室で修業して帰って来る。それが……夢。」


「…すげーな。」


「え。」



「…この歳で明確な目標があるってすげーと思う。」


「…そうかな。」



「うん。だって見てのとーり、俺なんてふらふら~っと。」



「…ぶっ…、その言葉ピッタリ。」


「……だろ。目指してるからな。」



「…何を?」


「ザ・自由人!」



「…何それ~。」



「馬鹿言え。難しいんだぞ、自由って。」



「…馬鹿だねぇ、そんなんしなくてもアンタは自由にしてるよ。」



「そうかぁ~?」



中道はどこか遠い目をしながら……



雨の行方を追っている。




真面目なんだか、ふざけてるんだか…。




「…幼稚園の頃から、二人でずっとそう言ってきたから疑う余地もなかったんだ。」



「………。」



「小学校の頃、りっちゃんがピアノ習い始めてさ。私もやりたくて両親にせがんだら…興味全然なかった癖に結もついてきて…結局一緒に習ってた。中学では私が陸上部に入ったら、結も陸上始めた。私が高校の推薦が決まったら、結は同じ学校を受験して…今こうして二人ここにいる。そこに結の意思はあったのかな。」


「……それは、俺にはわかんねーけど…要するに結はお前と離れたくなかったんだろうな。お前はアレだ、突っ走るタイプだから心配なのか、それとも……、よほど頼りにしてるのか。」



「………。」



「…ま、悩みも二人でわければいーじゃん。双子なんだし。俺に話すよかよっぽどスッキリすると思うけど。」



「…………。」




あ。



そうだよ。



何をペラペラと中道なんかに悩みを……。




「…じゃ、スッキリしたし俺もういくわ。」




中道は立ち上がると……


くるりと背を返した。



…何でそっちがスッキリしてんの。


でも……



「…中道っ。」



「……ん?」




でも……、



「…ありがとう。」



「…何が?」



「話聞いてくれて。」



「……。俺の居場所にいつまでもいられたら困るし。」




…かわいくない。



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