As Time Goes By ~僕等のかえりみち~




『続いて、個人賞を発表します。』





すっかり忘れていたけれど……、



そうだ。



伴奏者賞と指揮者賞があったんだ……。




期待はしない。


決してできないけれど……




中道と二人、あそこに並べたら……なんて、どんどん欲深くなっている。




教頭の口元から、目が離せない。





『伴奏者賞!……3年1組、立石二葉!』





「……………。」




そう……だよね。



間違えなかっただけでも奇跡に近かったんだ。


そんなにいい伴奏だって評価される訳がない。




「柚、アンタも負けず劣らずだったからね。」



「…ありがとう。」



律の言葉が、じんと染み込んだ。





「…指揮者賞……!」






これだけは、


どうか……!





『…1年2組、中道侑!』





「い……ぃやったあ~!」




本人よりも誰よりも早く歓声を上げてしまった私に……


注目の視線が注がれるのは当然の如く。




赤っ恥とはまさにこのこと!




「…おまえ、バッカだなあ……」



中道はしょーもないなって顔で笑う。



「指揮はお前が教えてくれたんだもんな。まさに二人三脚!…俺だけの賞じゃない。だから……ありがとう。」




中道の目が……


少しだけ、潤んでいた。





本当は……二人並んで受賞したかった。



でもその夢は叶わず……

それでも、やり遂げた達成感と満足感。





私は中道に心から拍手を送る。








「りっちゃん、後で俺らの写真とってくんない?」



戻ってきた中道が、私を指さした。



「指揮者賞とれたのは、ほぼコイツのおかげ。俺ばっかもらうのはしのびない。だから…、この賞状と一緒に。」



「…ん、わかった。」












合唱コンクールを終え、皆それぞれに教室へと戻っていった。




私達は教室に戻ってからも喜びを爆発させて……



皆で記念写真を撮ろうと、並び始めた。




「主役二人は前ね。」



私と中道はセンターに座らせられる。



最高の笑顔で……


シャッター音。




「上原っ、りっちゃん、こっち……」



集合写真をとり終えて。


雑談するクラスメイトをよそに……


中道に呼び出され、廊下に出る。








< 259 / 739 >

この作品をシェア

pagetop