As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
『続いて、個人賞を発表します。』
すっかり忘れていたけれど……、
そうだ。
伴奏者賞と指揮者賞があったんだ……。
期待はしない。
決してできないけれど……
中道と二人、あそこに並べたら……なんて、どんどん欲深くなっている。
教頭の口元から、目が離せない。
『伴奏者賞!……3年1組、立石二葉!』
「……………。」
そう……だよね。
間違えなかっただけでも奇跡に近かったんだ。
そんなにいい伴奏だって評価される訳がない。
「柚、アンタも負けず劣らずだったからね。」
「…ありがとう。」
律の言葉が、じんと染み込んだ。
「…指揮者賞……!」
これだけは、
どうか……!
『…1年2組、中道侑!』
「い……ぃやったあ~!」
本人よりも誰よりも早く歓声を上げてしまった私に……
注目の視線が注がれるのは当然の如く。
赤っ恥とはまさにこのこと!
「…おまえ、バッカだなあ……」
中道はしょーもないなって顔で笑う。
「指揮はお前が教えてくれたんだもんな。まさに二人三脚!…俺だけの賞じゃない。だから……ありがとう。」
中道の目が……
少しだけ、潤んでいた。
本当は……二人並んで受賞したかった。
でもその夢は叶わず……
それでも、やり遂げた達成感と満足感。
私は中道に心から拍手を送る。
「りっちゃん、後で俺らの写真とってくんない?」
戻ってきた中道が、私を指さした。
「指揮者賞とれたのは、ほぼコイツのおかげ。俺ばっかもらうのはしのびない。だから…、この賞状と一緒に。」
「…ん、わかった。」
合唱コンクールを終え、皆それぞれに教室へと戻っていった。
私達は教室に戻ってからも喜びを爆発させて……
皆で記念写真を撮ろうと、並び始めた。
「主役二人は前ね。」
私と中道はセンターに座らせられる。
最高の笑顔で……
シャッター音。
「上原っ、りっちゃん、こっち……」
集合写真をとり終えて。
雑談するクラスメイトをよそに……
中道に呼び出され、廊下に出る。