As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「投げられるような所に置いてたか?」



「…いつも…机の中。」



「つーか、楽譜だってわかった地点で捨てる奴はまずいないわな。」




「……うん。」



「…誰が……、こんなことを……?」



「…………。」




「…思い当たることは?」



「…ない。……と思う。」




「……そうか……。おい、何ほうけてるんだよ!早くもどるぞ!」



中道が私の腕を掴む。



「まだ教室に残ってる奴がいる。」



「…待ってよ、何するの?」



「決まってんだろ。誰か見た奴いねーか聞くんだよ。」



「いーよ、今更そんなの。」



「よくないだろ!」



「結果優勝したし、犯人探しなんてしてクラスの雰囲気壊すようなこと…したくない。」



「…お前、悔しくないの?」



「悔しいに決まってるでしょ。けど今更そんなことしたって…何の意味も持たない。」



「俺は……、人が一生懸命してきたことを無下にするようなやり方は許せねー。」



「……そうだね…」



「なら、怖じけづいてないで正々堂々と戦えよ!」



「……いいんだよ、中道。もう……いいの。」




クラスメイトが私を認めてくれた。



佳明が、結が、中道が……



全力で支えてくれた。



それだけでもう、十分。



大舞台に出たあの楽譜こそが……



私に、揺るぎない自信を与えてくれたのだから……。








それに……




私のことでムキになってくれる。



そんな中道見てたら……



怒りさえも、おさまってしまう。




悔しさよりも、嬉しさが………




勝っている。








「俺は納得いかねー!いいから…、行くぞ。」




私の気持ちなんててんでお構いなし。



怒りに任せたその勢いで……




奴はクラスに戻るなり、ひどい剣幕でそれをあらわにした。








「…ホントに知らぬーの、お前ら……?」




残っていた生徒達は、いつもとはうってかわった中道の姿に…たじろいでいた。






「…女子じゃねーの?やっかんでたじゃん、上原んとこ。」



「…あ?」


中道が女子を睨みつける。




「待ってよ、中道。少し冷静になったら?だいたい、自分のクラスが不利になるようなこと…誰がするってのよ。」




一番冷静だったのは……



律。


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