As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
中道の言う通りかもしれない!
そんな意気込みそのまま……
昼休みに、6組の教室を訪れる。
「結なら学食行ったよ?」
「……え。……ああ、そうなんだ。ありがと。」
結の友人にアタマを下げて……
その場を後にした。
なんで?
だって今日私が弁当作って持っていったよね…?
胸が……
ギュッと苦しくなった。
雨上がりのグランド。
私達陸上部は軽くランニングをし……
各々の強化練習メニューへと移った。
「上原。アンタ裾泥だらけ。ちょっと捲ったら?」
篠塚先輩に言われ、ようやくジャージの裾の惨事に気づく。
「……あちゃ~……」
私は手で泥を払い、数回折ってたくしあげた。
「ゆい~!」
遠くから、誰かが呼ぶその名前に……
つい、反応する。
遠くには、紛れもなく『結』がいて……
結はやっぱり私ではない『誰か』を見ている。
ぐちゃぐちゃの地面の水を、スポンジで吸い上げているのは……
野球部の部員達。
泥だらけになりながらも、その手を休めることはない。
もちろんそこには里中くんの姿もあって……
仲間達と笑い合うその姿すら、なんだか眩しい。
「…かっこいいよなあ……。」
得意のボヤキに真っ先に反応したのは、同級生の和田紗枝で……
「…結さ、里中くんに告白されたんだよね。いいよなあ…。やっぱり男の人ってかわいらしい子を好きになるんだね。」
そう言って……
私の肩をポンと叩いた。
…さえちん。
告白されたの……
私なんです。
「あ♪…中道。」
「…え?」
紗枝の声に……
私はもう一度、野球場に目をやった。
中道は……
野球場から少し離れた場所で…、
ぼうっと何かを眺めていた。
「………。」
その視線の先には、野球部の笑顔。
しばらくすると……
不意に中道は顔をそらし、ゆっくりと歩み始めた。
「…中道、やっぱ野球したいのかなあ…。」
紗枝がポツリと呟く。
「…さえちん、それ…どういうこと?」