As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「あははっ、か~わいい!」
「ねえねえ、これは?!」
「ダメだ、笑える~!」
朝から女子のはしゃぎ声で溢れている教室……。
「みんな、そろそろ決まった?」
私はひょいっとその輪の中に顔を出す。
「今いーとこ。そうだ、アンタにぴったりなものがある!」
律がニヤリと笑って……
私の頭に、何かを被せた。
………!
「うっわー……こりゃあ完全に結だわ。」
被せられたのは、私が家から拝借してきたウイッグ。
栗色のサラサラロングヘアーが……
首元にまとわりついた。
「それ被って大人しくしたら……妹と勘違いされてさー…今日一日、男にモテるんじゃない?」
ケラケラと悪気なく言った凪のひと言が……
ズキッと胸を締め付けた。
そう……、
私は昨日はおろか、今日の朝も……
結に聞けなかった。
聞ける状況にもなかった。
朝からウキウキしていた結は……
『柚の喫茶店行こっかな~』
…なんて、悪戯っぽく笑っていた。
「………。面白いかもね、ソレ。」
冗談でやりすごすが、上手くは笑えない。
「…じゃあ柚はソレで決定ね!」
律の鶴のひと声で……。
私の仮装(?)は決定。
私たちの催し物。
喫茶店……。
各々に仮装することが決まり……、
私たちはグッズを持ち寄って、物色していたのだった。
よりによって自分が持ってきたものを自分がつけることになろうとは……
迂闊だ。
現在、男子は教室追い出され…
廊下をウロウロ。
「上原さん。」
入口からそっと顔を覗かせて……
目をつむった三井くんが私を呼ぶ。
「…………。」
真面目だなあ、誰も脱いじゃあいないのに。
私はすぐさま廊下に出て……
三井くんの背中をポンっと叩いた。
「……終わった?」
そぉ~っと目を開けて、三井くんは私の姿を確認する。
「もうちょっと待った方がいいかも。これから着替えだからさ。」
「……そっか。いや、中道が確認しろってうるさくて。」
「………。なるほど……」
私は横目でアイツを見る。