As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
女子の張り切り具合に、さすがの三井くんも拒否はできなくて……
中道と二人、教室の中へと引きずられるように入っていった。
その約10分後………
わらわらと、入口には人だかり。
噂を聞き付けた他のクラスの生徒たちが、覗きにやってきたのだった。
「柚~、聞いたよ、中道くんコスプレするんだって?」
振り返ったすぐそこに紗枝の顔。
「……ミーハーだなぁ~。」
「アラ。だって見逃せないでしょ~?イケメンのコスプレ。」
「はい?誰がイケメンだって?」
「わかってる癖に~!」
…………。
まあ、そりゃあさ、ことの成り行きだとはいえ……
確かに、見物かもしれないなあ……、二人とも。
なんだか急に、そわそわしてきた。
聞こえてくる黄色い声。
その声を独占する二人が……
ゆっくりとこちらへ歩いてきた。
「……………。」
うぉおお~っ!!
そこに現れたのは………
「ぶっ……、なぁ~んで剣士なのよ~。」
何故か、袴を着せられた男達。
やはりそこは日本男児。
それはそれは似合っていて……
もう笑ってごまかすしかなかった。
中道に対する女子の反応は上々。
顔がいいって得かもね。
一方の三井くん。
トレードマークの眼鏡を外されお披露目されたその姿は………
予想以上の出で立ち!
熱い視線が……
彼にもまた、注がれていた。
「カントリー調の店なのに、すごいミスマッチでしょ?そこがまたたまらんじゃない?」
着付けを担当したらしい律は、満足げな様子。
中道は、手にした竹刀を上段に構えて……
その剣先を、真っ直ぐ私に向けた。
「…売上アップしてやる。」
「……おうよ。」
何の宣戦布告?
でも………
言い返す言葉もでなかった。
それは……
そう。
不覚にも………
見とれてしまったから。