As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
旧校舎を出て……
足早に歩く。
「なにしてんだろ、私……。」
いつもより短いスカート。
足元に風がスースーと流れ……
長い髪が、サラサラと靡く。
…ちっちゃな違和感。
私は……
不思議な感覚に陥っていた。
双子だから……?
似せた自分が……
まるで、『上原結』であるかのように……
シャンと胸張って。
しっかりと前を見て。
自信を味方につけて……
地に、足をつけている。
結が見る景色は……
いつも、どういうものなんだろう。
「…………。」
ふと花壇が目に入り……
私は、足を止める。
例えばこのオレンジの花。
結ならきっと名前も知っていて……
これを見る度に、馳せる想いもあるだろう。
そんな風に…
辺りを見渡すだけで、普段何気なく見ている景色が……
まるで、別世界にさえ見えてきた。
「………結…?」
ふと……、
名前を呼ぶ声。
「…………?」
私は……、
声の主の方へと……
振り返る。
「……サチ。」
そこにいたのは。
結のクラスメイトで、結とは仲のいい「サチ」。
「……結…、あの……」
彼女が口を開きかけたその時…
「…………サチ!」
怒鳴り声にも似た、女子生徒の声が……
名前を呼んだ。
「……なに?」
一瞬肩をビクつかせ……
サチちゃんは振り返る。
「サチも一緒にまわろーよ。」
「…………。」
彼女は……
眉を垂らして…
私と相手の顔を見比べている。
「……うん、今行く。」
そのまま顔を背けると……
何も言わないまま……
サチちゃんは歩き出した。
「サチ。今……、何言おうとしたの?」
拭いきれない不安。
私はひと呼吸置いて……
掠れる声で、言葉を絞り出す。
間違いなく、聞こえているはずだった。