As Time Goes By ~僕等のかえりみち~




旧校舎を出て……



足早に歩く。





「なにしてんだろ、私……。」




いつもより短いスカート。



足元に風がスースーと流れ……



長い髪が、サラサラと靡く。



…ちっちゃな違和感。




私は……



不思議な感覚に陥っていた。




双子だから……?





似せた自分が……


まるで、『上原結』であるかのように……




シャンと胸張って。
しっかりと前を見て。



自信を味方につけて……



地に、足をつけている。






結が見る景色は……



いつも、どういうものなんだろう。




「…………。」




ふと花壇が目に入り……




私は、足を止める。





例えばこのオレンジの花。



結ならきっと名前も知っていて……


これを見る度に、馳せる想いもあるだろう。







そんな風に…


辺りを見渡すだけで、普段何気なく見ている景色が……



まるで、別世界にさえ見えてきた。






「………結…?」



ふと……、



名前を呼ぶ声。



「…………?」



私は……、

声の主の方へと……



振り返る。




「……サチ。」




そこにいたのは。



結のクラスメイトで、結とは仲のいい「サチ」。





「……結…、あの……」


彼女が口を開きかけたその時…



「…………サチ!」



怒鳴り声にも似た、女子生徒の声が……



名前を呼んだ。




「……なに?」



一瞬肩をビクつかせ……



サチちゃんは振り返る。






「サチも一緒にまわろーよ。」



「…………。」



彼女は……


眉を垂らして…



私と相手の顔を見比べている。




「……うん、今行く。」




そのまま顔を背けると……



何も言わないまま……



サチちゃんは歩き出した。




「サチ。今……、何言おうとしたの?」




拭いきれない不安。


私はひと呼吸置いて……


掠れる声で、言葉を絞り出す。




間違いなく、聞こえているはずだった。







< 281 / 739 >

この作品をシェア

pagetop