As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
途端……、
「………え?」
大きな、違和感。
私達の後ろには、確かに花畑のように……
花が散りばめられている。
けれどそれは余りにも乱雑で。
一歳手抜きはしない結の……
センスに溢れる世界なんかじゃなくて。
ただの……、
『造花が置かれた部屋』。
こんなの、結がする訳ない。
絶対……、
結じゃない。
結の描いた世界は………
どうなったっていうの…?
「結ちゃん離れすぎ。もうちょい近づいて。」
カメラマンの指示に…、
ようやく、我に返る。
「……だってサ。照れないでもっとくっつけば?」
迷いなく……、
中道が、私の肩をひき寄せる。
中道……、私、結じゃない。
結じゃないんだよ……?
パシャっとシャッター音が鳴り……
私は、つい、俯く。
「ハイ、じゃーもう一枚ね!」
「……えっ?何で?」
「何でって…。一枚しかなかったら、一人しか写真貰えないでしょ?」
「………あ……、そ、そうか。」
中道の顔が……
再び近づく。
「……ぼったくりもいいトコだけどさあ……、お前、もうちょい楽しそうな顔しろや。」
ヤツが……
手元のポラロイドを眺めながら、静かに呟く。
「………え……?」
今……、
ぼったくりって……。
「センスねーな、マジで。結の作品とは思えない。」
「…………。」
中…道…?
アンタも…気づいた?
「…今……、この瞬間だけは…、笑って。」
「………。」
「…ちゃんと後で説明するから、……柚。」
「…………!!」
中道が……
私の名前を呼んだ。
「…じゃあそろそろOK?それじゃあ、撮りまーす!」
カメラマンの掛け声と。
「…笑え!」
中道の声とは、ほぼ同時だった。
上手く笑えたかはわからない。
ただ、動揺を隠す為に……
まるで条件反射であるかのように微笑んだ私は……
きっと、いつもよりも数段、情けない顔をしているだろう。