As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
部活帰り……。



私は一度昇降口に行き、あることを確認していた。




「……よし。」



ピンクの傘は……


そこにはない。




ちゃんと持って帰ったんだな。





安堵の息をもらして……



それから、



再び外へ出た。




「……あれ、…中道…?」



「おう。部活…、終わった?」




中道が…



またしても私の目の前に。



「終わったけど…、中道なんでまだいるの?」



「…ん?トナリの小学校に用あってさ。今その帰り~。」



「……小学校…?」



「おう。」



「何の用事よ?」



「…ん~?まあいいじゃん。つーか、今帰りなら途中まで一緒に帰るか?」



…冗談?
…本気…?



この男のやることはいつも唐突で……


わかりづらい。



一体何を思ってこんなこと言ってるのさ……。



「受けてたとうじゃない。」



「…は?何が?」



「いや、こっちの話。」



「……あっそー。」




それから……




私は何故か、この男と肩を並べるハメになった。





「………中道さあ…。」



「…ん~?」



「お兄さんいるんだってね。」



「……。いちゃ悪い?」



「ううん。割にしっかりしてる所もあるから長男かと…。あ、でも妙な要領の良さはやっぱ次男か……。でもお兄さんがいるって羨ましいなあ~。しかも、有名人……」



「……。日が暮れるの、遅くなったな。」



「………?」



中道は……


まだ少し明るい空を指差した。



……話、逸らした…?



「甲子園、見てたよ。まさかあの人が中道の…」



「……。お前さ、何言いたいの?」



「別に、ただすごいなって…。」



「兄貴は兄貴。俺には関係ない。」


確かにそうかもしれない。



でも……



「…何卑屈になってんの?」



「はあ?」



「…比べられるのが嫌?それとも…自分にないものをお兄さんが持ってるから嫉妬でもしてる?…カッコ悪…。」



「………。」



「…比べられることなんて、大したことじゃない。」



「………お前に…、何がわかる?」


「………。」



「お前に俺の気持ちなんてわかるのかよ。」



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