As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
涙が出そうになった。




私はそれをぐっと堪えて……。



裾を握ったまま、歩き始める。




歩いて、


歩いて…………。




けれど……




神社の入口付近まで来た時に、こっちではなかったとようやく気づく。




……お母さんの言う通りにしなかったからだ。



柚を待っていれば良かったんだ。






私は……



声を上げて泣いた。




見慣れたはずの神社。


けれど私の傍には柚がいて……



私は、いつもいつも彼女の背中ばかりを追っていた。



一人では……



方角すらわからない。




それに気づいた時に、


悔しくて、情けなくて……





我慢していた何かが、せきをきって溢れ出したんだ。





周囲の人達が、じろじろと私を見ていた。



すれ違う時に、「大丈夫?」と声を掛けてくれる優しい人もいた。



私は……


広い境内の中、あっちへ、こっちへと歩いて回るが……



ついには歩き疲れて、
その場にへなへなとしゃがみ込んだ。




泣くことにさえ疲れて。



それが啜り泣きにかわった頃……


襲ってくる睡魔に身を任せ、私はそっと……



目を閉じた。









『ゆい……』




「…………。」



『……ゆい?』




夢の中で。


誰かが私を呼ぶ声がした。



「結。どーしたの?」



ふと顔をあげると。




「……ゆう……。」



そこには、心配そうに顔をのぞきこむ柚がいて……



けれど、私を咎めるでもなく……


にっこりと笑っていた。




私は柚に抱き着いて。



わんわんとひと泣きして。




「……よし、行こっか。」



柚に手をひかれながら…



彼女の半歩後ろを歩いた。




「……ごめんなさい。」



小さな声で謝る。



柚は何も言わず……



繋がれた手を、ギュッと握り返した。







彼女は時折足を止めては、キョロキョロと辺りを見渡した。



「…こっちだ。」



迷いなく道を進めるのは、


柚がいかに冷静に…周囲を見ていたのかがわかる。



浮かれていた自分とは……


まるで、正反対だった。




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