As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
それが正しい選択だったかは解らない。



それでも……



彼女が隣りにいることは、私をより強くさせた。



例え……、



そう。



どんなに追い掛けても、追いつくことのできない存在…。


そう、わかっていても。








柚はいつも私の先を走っていた。



一度も勝ったことはない。



それはそうだろう。


柚の足に敵う同学年の子なんて……


全国に、ほとんどいないなかったのだから。



だけど……、



それだけじゃなかった。



柚の周りには、いつも友達がいた。


賑やかな輪の中心にいて……



それは、いつ、どこにいたって変わらなかった。



先生からも信頼され……、


自他共に認めるおっちょこちょいだったけど、


その人望は……


時折、責任を任されるような役だって担った。



それは……、そう。
今も同じ。



本人は貧乏くじを引いているかのように思っているけど……



そんなの、見当違い。





みんなが……



結の周りに集まってくるのだ。




私はいつもその影で……



自分の居場所を探していた。



みんなが私を見てくれる……、



そんな日が来ることを、密かに期待して。




……必死だった。




目立ちたくて始めたヘアーアレンジ。



それは思いの他……、



女の子達をひきつけた。



もっぱら、派手めの女の子達が近づいて来るから……



彼女達の恋愛話を、うんざりというくらい聞かされた。



周囲の恋愛事情は余所に……、



一方の柚は、そういった類のことには…


ほとんど無頓着。



ずっと陸上ひと筋。



中学時代には、私の方が……


髪の毛をいじったり、母の見よう見真似でハサミを上下させていた。



そうやって、


自分を磨きたい一心でいたことが……



私の人生を変える。



時折、男の子が私に告白してくるようになったのだ。



もちろん、興味のある年頃……。



好みの子だったら、とりあえずは付き合ってみた。


けれど……、



どうしても「好き」のバランスがとれなくて……



自分の気持ちがわからなくなって別れる。



長く続いて数ヶ月。



そんな恋ばかりを……


繰り返していた。


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