As Time Goes By ~僕等のかえりみち~









「………いた。」









「……………?!」








随分長い時間……、






ここでこうして……しゃがみ込んでいたような気がする。





「………大丈夫?」





いつか……




彼が私に声を掛けてくれた、その時と同じ口調で……






中道くんが、私の顔を覗む。



そして……私の隣りへと、座り込んだ。





あの時の……



夢のようなひと時の……



続きだろうか?







彼は私を放っておけなくて。



寄り添うようにして、そばにいてくれた……



あの、日々の………。




同情は、お互いを虚しくする。






彼はもう知っているはずなのに……、




馬鹿だね。








「…お前さ…、いつまで黙ってるつもりだったの?」




「…………。」




「…らしくないじゃん。仕事投げ出すなんて……。」




「…………。」




「…そうやって、いつも塞ぎこんでて……、もう…限界越えてたんだろ。ホントは、あの時から……。」



「……違う。」



「……違わない。」



「違うよ!」



「……なら…、どうしてまだお前は一人でいるんだよ。『もう大丈夫だ』って…、あんなの、嘘じゃねーか。」



「……………。」




「……もう、あいつは気づいてる。」



「…………!」




「なあ…。俺なんかより、何でアイツに先に言ってやんなかった?」



「……それは……」




「迷惑とか、面倒だとか、あいつが…そんなこと思うタマかよ。」



「…………。」



「何度も言わせるな。俺じゃお前をどうしてもやれない。お前のことを一番わかってやれるのは………」



「………柚は。……責任感が強い。きっと無駄に心配して、うっとーしいくらいに、私に纏わり付く。それが……面倒だった。ただ…、それだけ。」



「…………!」




「柚のことだから、心配してたでしょ?ひょっとして、今頃私を探してる?」



「…………。」




「…中道くんはさー……、結局、私を心配してるんじゃない。私のことを心配する『柚』が気になるだけで…。なんでまた、私んとこに来るのよ。…いらないよ、そんな嘘の優しさは。」





最高に嫌な女。



なのに……、止まらない。




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