As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「……かわんねーな、本当。弱ってる時ほど…嘘をつき通す。俺はこれでも……、少しはお前のことわかったつもりだった。『うっとおしい』とか、お前があいつのこと…、そんな風に言うなよ。これっぽっちも思ってないことばっか……。カンがいいのも、このくらいにしておけ。確かに……俺は、上原のことは気にするよ。そんなん今に始まったことじゃないし…、お前がよく知ってるだろ。」



「………。」



「……結の為だと言いながら、上原を悲しませない為にっていうのも……間違いじゃない。…でも。肝心のお前が、ちゃんと向き合ってない。それが……一番、気になってる。」




中道くんは。




私の腕を……



ガッチリと掴んだ。




「……何すん……」
「…だから!嫌でも、連れてく。」





「………でも……!」



「…お前がしてることは、結局は自分の首を絞めているだけだ。クラスの連中にも、柚にもわかってもらいたいなら……これ以上、逃げんな!」




「………!」




私の前で。



彼が……「柚」と名前を呼ぶのは初めてで…。



その瞬間……。




全身の力が……



一気に抜けていった。









彼は、柚を守りたい。



だから……



私のことにも、いつもいつも真剣に向き合ってくれた。




縋る思いで彼を繋ぎとめていた癖に。
自分から……
手を離した癖に………。






胸の鼓動は、正直だ。




私はまだ……



彼のことが好きで、好きで…たまらなくて。






だから……



身を委ねるようにして、




腕から伝わるその熱を感じながら……






彼が向かうその先へと、歩みを進めていった。







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