As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
廊下を進む、そのあしどりが……



次第に重くなる。






この手に触れていることが嬉しいはずなのに……



それがかえって、周囲の視線を誘う。




今は…
それが少し怖い。






中道くんと一緒にいる時は、いつもそうだった。



何する訳じゃなくても、周囲の視線を奪って……



それは、

羨望の眼差しと
嫉妬の眼差しとが



入り交じった……



特別なもの。



私を…優越感に浸らせていた。




そんな彼が……



唯一、視線を送っていた相手。



それが柚であったことは……




悔しくて、



そして、嬉しくもあった。



私達は双子だから……




私までもが認められた気がして。





私を見てくれるかもしれないなんて…



くだらない期待を持って。




わかっていたのにね……。



出会った時から。



彼は決して見た目で人を判断する人じゃないって。


柚だけが特別な存在なんだって。





周囲の人達に見せる笑顔と…



柚だけに見せる自然な笑顔。




その違いに気づいたのは……




私だからかもしれない。




だって、



初めて彼が見せたその顔は。

「柚」だけに見せる笑顔だったから……。





それ以来。



私は中道くんの…


そんな顔を、見たことはない。






見ることができたのは、遥か遠くから……。




その隣りにいたのは、




柚だった。









「………ちょっと待てよ。」



中道くんは……



突然、歩みを止める。





「よく考えたらさ、お前ら二人が揃ったら…それはそれで、ややこしいことになるよな。」




「…………うん。」




「お前はここで待ってて。上原をこっちに連れてくるから。」



「……うん。…あ。ねえ…、柚は……大丈夫かな。」



「…今更そこかよ?…大丈夫、絶対。ちゃんと周りに釘さしたし…、あいつはなんだかんだ言って…、強いから。」



「…………。」



「……けど…、その強さだってさ、結局は結がいるからなんじゃん?」


「…………。」


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