As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
それはあんに、


「行け」と言ってるんだと思う。



こっちの心配とはよそに。昨日といい、今日といい……



ちょっと前に見た、あいつの泣き顔は……



見間違いだったんじゃないかと思うくらい。



……強くなったと思う。



大丈夫と言うなら、そうなのだろう。




けど……



「待て。お前なに能戸と仲良くなってんだ?」



「……?だって、クラスメイトだもーん。」



それは結の方だろ。



でも……


そこは突っ込めない。



「「やだ、ヤキモチ?」」




能戸と柚が声を揃える。




…息までピッタリだし。



「………。あほらし、わかったよ。邪魔者は退散するから。」




「…いってらっしゃ~い!」



能戸が、手をひらつかせる。



それが妙にいらついて、二人に背を向けるが……




「……中道くん。」



柚の呼ぶ声に、つい、足を止める。



「言っとくけど…、アンタと古い仲だって言うから……安心しただけ。」





「…………。」



……。どう反応しろ、と……?







俺には柚の考えていることは何ひとつわからなくて……



あいつの言葉に、どれだけ翻弄されたかわからない。



だけど、絶対の信頼は置いていて……




「わかってるよ。」




憎まれ口を叩く事で、自分の気持ちを……感情を……


コントロールしていた。





あいつといると。
感情が揺さぶられる。



そう…、


いとも簡単に、俺のつくった壁さえも、ぶち壊してしまうから……




時折、タガが外れてしまう。




そうならないようにと、
距離を置いたのは……



あいつが里中と付き合い出した頃だった。





なのに……



近づかないと決めたって、


口すら効かなくなったって、




変わらぬ想いが……




そこにあった。





あいつは何故かいつもいつも……



俺を受け止めようとする。



しかも、全力で……。




どれだけありがたくて、
どれだけ嬉しかったかなんて……


言うまでもなく、伝わっていただろう。





そんなの百も承知で……



あいつは、
柚は……



里中を選んだ。





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