As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…じゃないと、柚は一生振り向かないかも。中道くんが私にそうだったみたいに。」




「……………。」






結の投げ込んだ言葉は……


俺の心ん中。



真っ直ぐど真ん中のストレート。




全力で振りに行こうものならば。



それこそ大振りするような……



これ以上ない、いい球だった。




これもまた。



柚の影を…ちらつかせる。





「………あいつに…、俺、言ったんだ。」



「………?」





「目ェ逸らさないって、ずっと見守るって…。でもって、甲子園に行けるように頑張る…なんて宣言してさ。」



「……かっこいいね。」



「だろ?結構俺もさ、あいつの言葉に感化されたりしてきたんだな。」



「…………。」



「……ずっと野球がしたかった。里中がマウンドに立つのを、野球部の試合を………複雑な想いで見てた。試合に負けた時さ…、やっぱり悔しくてどうしようもなくなって。そん時に…泣きたきゃ泣けばいいって、あいつの前だけで、悔しさも弱さも…さらけ出せばいいって。そう…言ったんだ。」



「……柚らしい。」



「……うん。あいつなりに励まそうとしてくれたんだろう。『誰が何と言おうと、私だけはアンタの味方だから』。……そう言ってくれた時に。…ガツンときた。あいつにとっては深い意味はなくても、俺にとっては最上級の励ましで…、なんでアイツは俺のものじゃないんだろうって……、どうして手に入らなかったんだろうって……そう思った。」



「………。」



「格好つけたかったのかな。お前がいないとダメなんだ~とか、言っちゃえばよかったのかも。」




「………。中道くんて…、柚と似てるよね。」




「……どこが?」




「もっと狡くなればいいのに、相手にとって正しいって思う方を選んじゃうあたり。」




「…………。」



「もうちょっと、したたかになってもよかったと思う。今からでも…遅くはない。」



「……結…。」



「私は、宣戦離脱したよ。試合放棄!でも…、まだ、中道くんは戦いの舞台に立ててる。柚の視界にちゃんと入ってる。」



「……だと、いーけど。」





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