Ａｓ Ｔｉｍｅ Ｇｏｅｓ Ｂｙ ～僕等のかえりみち～

「………でも、中道が選んだことには違いない。」



「…だーかーら、あいつの性格考えろって！つーか、アンタもあいつのこと好きな癖に…だったらなんで里中と付き合ったんだよ！」



「……それは……。」




それは……



結の想いを知ったから…？



二人が好き合ってると…思ったから？




「お互いが…お互いの気持ちを勘違いしていた。見事なタイミングの違いだと…俺は思うよ。」




「…………。」





「けど……、どっかで諦めきれてない。アンタも、中道も。……俺も。」




「…………。能戸くんは…、諦めてないの？」



「…おうよ。だって……、これからじゃん？いつまでもあいつにハナ持たせておく理由はない！つーか、さっさとつかまえてくんないかなぁ？」



「……ええっ？」



「…俺らはある意味、同志だ。俺は結を、アンタは中道を……奪いたい。」



「…奪うって……。」



「…言い方悪いけど、現実的に言ったら…そうなるだろう。」




「…………。」




「…俺は……、頑張るよ。……アンタは？」




「………私は……」




「中道の気持ちに応えたいって…そう思ったことがあるなら。……遅くはない。」



「…………。」




「…解放してやれよ、アイツの肩の荷物を…下ろしてやれ。」




「……でも！佳明が……」



「アンタが本気で里中を好きになったんなら、仕方ないと思う。でも、里中といる時に……一瞬でも思い出したりしなかったか？」



「…………。」



「…そこまで好きだった奴のこと、これっぽっちも気にならなかったのか？」



「…………！」




「………頑張ろうや、一緒に。」



「………。」





「……頑張れ！！」







恋愛に……


必死になることなんて、ないと思っていた。



そこには必ず『相手』が存在して……



自分一人の想いくらいじゃ、どうにもならないと知っていたから。



陸上のように、自分自身と闘って、頑張って頑張って……



その努力が、僅かなりとも実を結ぶ…。



……そんなことは、ないと思っていたから。







諦めた方が……
簡単だったから。



苦しくならないから。




自分が………


楽になれるから。