As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
それらは全てはいいわけで………



私は、間違いのない方を選んだ。



自分が幸せになると思った方を。







けれど、


忘れたことなどあったか?



思い出さない日はあったか?



「………好きでいて…、いいのかな。」



「ん?」



「好きでいても……いいのかな?」



「………!当たり前じゃん。人の気持ちだもん、どうしようもないじゃん。」




「………うん。」



「……里中とは…どうするの?」



「……ちゃんと…、話す。わかってもらえなくても仕方ないよ。佳明のことを好きって思ったことは、嘘じゃない。……けど、それ以上に……」



「…中道のことが好きだ…と?」



「……うん。全部、正直に。」



「…別れを意味するよ?」



「わかってる。」



「…中道とうまくいくとは限らないよ?」



「うん。気持ちがハッキリした今……これ以上、隠すことはできない。中道に振り向いてもらおうとか、そういうのは……ちゃんとケリをつけてから。」




「………。勇ましい……。さっすが中道を野球の道に導いた女だけのことあるな。」



「……え?」




「……言ってたよ、アイツ。『上原がいなかったら今の俺はない』って。」




「…………。そうなんだ……。」




「……なあ、結果はともかくとしてさ…、ダメもとな気持ちで、やってみよーぜ。」





能戸くんは……


私の目の前に、手を差し出した。




私はそれを。



ギュッと握って……




「…でも…、絶対オトせよ。」



彼の冗談まじりの言葉に…



「そっちこそ。」



対抗意識を燃やして。




しっかりと…握手をした。







互いの、健闘を祈って。











「……あの………」



そんな私たちを。



じっと見つめる視線があった。




「………サチ。」



サチちゃんだ。





「……えっと…、これはなんていうか、スポーツマンシップにのっとったと言うか……。」



手を握り合ったことへの、言い訳を……



必死で考える。




「…………?」



サチちゃんは。


キョトンとその場に留まって……




「柚ちゃん、廊下で…結が呼んでる。」




「………え……?」



さらりと『私』の名前を呼んだ。
< 328 / 739 >

この作品をシェア

pagetop