As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
私は……、廊下に出ると、キョロキョロと辺りを見渡した。



「……あれ?」



結の姿は……



ない。



「………?廊下って…言ったよね。」




教室を一つひとつ覗いていくけれど。



「………?」



やはり……



いなかった。





「どこに……?」



中道は……


一緒じゃないのかな。





私はしばらく考えて……


はた、と気づく。




結と二人でよく行った場所。



あそこなら……



今日はきっと、人はいない。




結は逃げたりなんかしない。



きっと……




そこで待っている。



根拠のない自信が……


私を駆り立てる。




それから。


全力ダッシュで………






彼女の元へと向かった。














その……


扉を開く。




ひゅうっと音を立てて……



吹き抜けた風が……





彼女の後ろ姿、
その髪を……揺する。




学校の屋上。


朝一番に…結と来ていた場所。



「………結ッ!!」




その背中に……


ありったけの声で、叫ぶ。







「……やっぱり、わかったかぁ……。」




くるりとこちらに振り返った結が、


眉を垂らして笑う。




最近では見たことがないような……、
穏やかな笑顔。




「柚はさ…、いつも人のことで一生懸命だよね。どれだけ損してるのよ。」



「………。」



「…でも。やっぱり柚だけは、私を見つけてくれる。」



「………結。」



「……ひどいこと…、したのにね。」



「…………?」




「大事な人達を…傷つけた。私の勝手な想いだけで。柚も、中道くんも……。」



「馬鹿。傷ついてなんかない。私だってね、結がいなければ…、自分の本当の気持ちに…気づけなかった。」



「…………。」



「感謝してるばかり。私には…必要だったことなんだよ。これから先、自分が向かう道の為に。」



「自分が…向かう道?」



「…うん。時間がかかるかもしれない。もしかしたら、もう遅いかもしれない。でも、結みたいに…相手にぶつかる勇気がなかった。今度はちゃんと……素直になれる。気持ちは……中道へ。真っ直ぐ、真っ直ぐ…突き進むだけ。」



「………本当に?」



「…女に二言はない。」



「……里中くんは?」

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