As Time Goes By ~僕等のかえりみち~





グラウンドは、何やら人だかり。




「…すごい大盛況……。」



私はキョロキョロと辺りを見渡す。



ここは……



野球部とサッカー部が催し物を設定しているはず。




中道は、ここの担当……



とか?





ストラックアウト、VSピッチャーのコーナーには……



中道らしき人はいない。



けれど、他の1年生の野球部員たちが……所々で忙しく動き回っていた。




「………?」



私が奴を見つけられないなんてことは……



ない。



どんなに遠くにいたって、あいつだけは………。





その時だった。




女子の黄色い声と、
男子の低い歓声が……




会場に響き渡った。




「…………!」




それは……



サッカー部のコーナーの方から。





その、視線の集まる場所に……




「………いた……。」




中道の姿があった。




私は人だかりの中に行って、近くにいた生徒に声を掛けた。




「…ねえねえ、なんの騒ぎ?」



「これ?…野球部の中道くんと里中くんが、サッカー部と、直接対決してるの。今のところ、PK戦2対2で引き分けてる。」



「……へぇ……。」




確かに……




佳明の姿も、そこにあった。



気づきもしなかったなんて……。



どうかしてる。




「男子は賭けしてるみたい。私はさすがにサッカー部が勝つと思うけど……」



「……どうかな。」




奴と佳明が手を組めば……



ある意味、最強かもしれない。








PKは3順目。


ここのルールでは…


これが、最後の対決。





ゴール前に立ったのは。



……中道だ。






サッカー部員が、ボールを蹴る。



……左足で打たれたシュートは、大きく弧を描いて……



ゴールの右上へと向かっていく。




「…………。」




次の瞬間にはー……



ボールを両手でしっかりと掴み……


グラウンドに転がる中道の姿。






「……とった……!」





いつの間に着替えたのか。




サッカー部のユニフォームに身を包んだ中道は……


その、砂だらけの服をポンポンっとほろって。




ギャラリーにむかって、ニカッと笑って見せた。




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