As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
この笑顔で……


これまで何人の乙女の心を奪ってきたんだろう。



残念ながら、私もその内の一人だけれど……。





………と。





「……柚?!」




「…………!」




佳明が……



私の名前を呼んだ。




一度こちらに背を向けた中道が……


不意に、振り返る。






「……上原……。」




……見つかった。



途端、私は急激に…逃げ出したくなる衝動にかられる。




今、向き合わなければならない相手が…二人。



しかも顔を揃えて、目の前にいるのだから。







人目を気にせず、近づいてきたのは…


佳明の方だった。






「ごめん、そっちに行けなくて!行く途中で捕まって……抜けられなくなっちゃった。」



「……うん、いいの。」



「……?けど、一緒に回れる時間帯ってここしか……」



「……いいの。……佳明、私も……一緒に回れなくなったから。」



「……すぐまた当番だもんな、残念だけど…仕方ないか。」



「…そうじゃない。」



「……え?」



「……一緒にいれない理由が…他にあるの。」




「………理由?」



「佳明、私……」



「………ちょっと待って。それは、今こんな所で聞かなきゃいけない話?」



「………あ……」




気持ちだけが焦って……



全く周りが見えていなかった。



こんな大切なことを、
今この場で……



言うべきではない。





「……ごめん。後で…学園祭が終わったら、聞いて貰えるかな。」



「……聞きたくないな。」




「………!」



「……冗談だよ。そんな深刻な顔されちゃあさ、流石に俺も怖くなる訳だ。」



「………ごめん。」



「…なんで謝るの?」



「……ごめん。」



「………。柚さ、まだ時間はあるの?」



「…え。……あ、うん…。少しなら。」



「なら、折角だから少し見ていってよ。」



「………。」



「……永遠のライバル対決。これからが見物だから。」



「……え……?」




佳明は。
私の頭にぽんっと手を置いて、それから……


寂しそうに笑った。




「…勝ってみせるよ。」




「…………。」



「……じゃ……」



「……うん。」
< 335 / 739 >

この作品をシェア

pagetop