As Time Goes By ~僕等のかえりみち~



あれは……


本気の球。






これは……、ただのゲームじゃないの?





二球目……、スライダー。




大きく振ったバットの上部を掠め……



ボールは、キャッチャーの後方へと跳んだ。



……ファウル。






あんな球……

打てるのだろうか?




私は祈るようにして……



二人のその対決を見守る。




三球目……。



キャッチャーの前で、ボールが落ちて……


バウンドする。


バットは動かない。




……ボウル。









カウント、1ボール2ストライク。




「………。」



二人の目は、いつになく真剣で……




ギャラリーにも、その熱意が伝わる。



「…ありゃあマジだぞ。」




わらわらと……


近くにいた生徒達が、集まってきていた。






そして、4球目……。





甘めに入ったストレート。



中道はそれを逃さずに……


バットの真ん中で、それを捕らえる。





速い打球は真っ直ぐそのまま……


佳明の方へ。






「……………。」



……ボールは……



グローブの中。






…アウト。




「…やっぱそう簡単に打たせてはもらえないかぁ~。」



「……当然だろっ。」




張り詰めていた緊張感を、一気に和らげるようにして……



二人に、笑顔が戻る。






「……チェンジだ。」




佳明はバッターボックスへと走る。




「…はあ?勝負になんねーよ、俺の球じゃ。」



「やってみなきゃわかんねーだろ?」



「…お前なあ……、県大会準優勝チームに通用するわけねーだろ?」




「……そうやって、また…逃げんのか?」



「…………。」



「それなら、それでいい。負け犬のまま、おとなしく彼女の前から逃げろよ。」



「…………!」



「俺はそれでも全然構わないし、有り難いばかりだけどな。」








中道と佳明が何かを話しているけど……



こちらには、聞こえてこなかった。







「………上原ぁ~!」



「……えっ?」




中道が突然……


私の名前を呼んだ。



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