As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「………最後まで見ていけよ。」



「…………。」



「…俺も、投げるから。」




「………!」




中道が……



マウンドに立つの?





「…最初で最後。だから……ちゃんと見て。」








中道が……


何で私にそんなことを言ったのかはわからない。


でも……



中道が投げる姿を見てみたいと、強く強く思っていたのが……


ヤツにも伝わっていたのかもしれない。






私は黙って頷いて。


それを見た中道も頷いて。





彼は…マウンドへと駆けて行った。




一方の佳明は……



ゆっくりとバットを回して、
その動きを……ピタリと止める。




そのバットが指すのは……



野球場ならば、レフトスタンド。




ホームラン予告。





「マジ手加減なしかよ!」



苦笑した中道だけど。


その顔は……
何だか嬉しそう。









中道は……


キャップを目深に被って。





そして……




真っ直ぐに、正面を見据えた。






中道が投げたストレート。




小気味よいバットの音が聞こえて……




その球は、3塁の手前のラインをわった。





私はホッと胸を撫で下ろす。



………ファウルだ。






二球目は……


速球かと思いきや……


ゆっくりと軌道を曲げて、沈むボール。




佳明は…ぐっとバットを構えるけれど、


その球を……
見送る。






「……チェンジアップ…?」



すごい、球が沈んだ。


下手したら、つい投球フォームにつられてバットを振りそうだけど……



佳明は、冷静に見極めていた。




……ボウル。




「……こえーな。さっそくコレかよ。」



「………まだまだだ。」








他の野球部員達は……


驚きの瞳で、彼らを見ていた。




中道の中学時代を知らない人が……



中にはいるのだろう。







カウント、1ボウル、1ストライク。








それから……



中道は、何球投げたであろう。




投げてはバットにあてられて。


それらは……



すべて、ファウル。




バットに当てる佳明がすごいのか…


それとも、ヒットにさせない中道がすごいのか……



必死の攻防戦。
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