As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「傲慢な男だよ。手に入らないものなんてないと…思ってるんじゃないか?上原さんだって…、こんな簡単に、奴に堕ちるんだ?」



「……なに……それ。」




黙って聞いていたけど、



中道の過去なんて知らないけど、





私が好きになったはずのあいつを馬鹿にされたようで……、



悔しかった。




「…手…、離してよ。」



「嫌だ。」



「…離して!」



その手を、思い切り跳ね退けると……


三井くんは、寂しそうに……俯いた。


「……なんなの…、もう…。どうしろって言うの?三井くん。あなたが何をされたかは知らない。でも、過去を引きずったまま、恨みつらみを重ねていくのは……どうかと思う。」



「……そう。上原さんも結局…、あいつの味方なんだ。」



「…味方とか、敵とか、そういう風に……もう、見てないから。」



「………!」



「……好きだっていうだけ。だから、信じたいし、想いを伝えたい。」




「………つまらないな。」



「……え?」



「俺は、上原さんを好きになったのに。」




……三井くんが…?


私を……?




「……そんな風には……見えなかったけどな。」



「…実行委員に推薦したのだって、ちゃんとそういう理由があった。」



「…………。」




いつも穏やかな眼鏡の奥が……



鋭く、私を見ている。





まるで……、別人みたいだ。




「中道とそうしたみたいに……、既成事実でも作っちゃえばいいのかな。」



「……え……?」




「…あいつみたいに、強引に…奪えばいいのかも。」



「……な……に?」



「…一つくらい。譲ってくれてもいいんじゃないかな。一番大切なものに裏切られたら、少しくらい人の痛みが……解るかもね。」





誰もいない廊下の一角で。



壁に押し付けられた私は……



既に、逃げ場などなかった。





「……私に何かして三井くんが満足するなら…それでいい。ただ、あいつを……中道を傷つけることはしないで!」




「……かっこいいね、ホント。でもさ、上原さんを奪うことが……今の中道には、一番堪えるんだよね。だから……、俺にとっても、都合がいい。」



「………!」


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