As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
5月某日……
私は、トラックの真ん中のレーンに立ち……
真っすぐにゴールを見据えた。
県高校陸上競技大会。
女子100m走決勝の舞台。
「第〇レーン、〇〇高校、上原柚。」
私は大きく手を挙げて……
拳を握る。
ギュッ
ギュッ
ギュッ……
3回、ありったけの力を込めて。
緊張を解く…おまじない。
ピストルの音と、ほぼ同時に……
私はスタートを切った。
会心のスタート!
身体が…
軽い。
練習の成果かな…。
足が上がる。
私の視界に入ってくる者はいない。
一人で………風を切って駆け抜けていく。
…が、
『ビリッ……』
何かが破けるような…、
もし音がしたとするなら、そういう音だった気がする。
突然襲ったふくらはぎの異変に……
体重を支えることができない。
ゴールまであと数メートルなのに……
ゆっくりと身体が崩れ落ちる。
その時見た情景は……
まるで、スローモーションだった。
選手たちの後ろ姿が……
私の先を走る。
耳元に……
仲間の悲鳴に近い叫び声。
一体何が起きたのか……
わからなくもない。
それでも私は……
立ち上がる。
左足が痛くて…
地面につくことができない。
ゆっくりと…
大きく腕を振り、右足一本で……
最後の力を振り絞った。
.
靭帯損傷。
…コーチの見解。
それでも私は病院に向かうのを拒否し続けて……
仲間の戦いの行方を見守る。
結果……
6位入賞を果たしたチームメイトは多く、無事私達の高校は……
二年連続、総合優勝を果たした。
一度手放した優勝杯と優勝旗。
そして、県知事杯を授与され……
華々しい結果を残したのだった。
顧問の車に乗せられて……
整形外科へと向かう。
揺れる車の中で……
涙が一筋、伝っていた。
全国大会はおろか…、
東北大会への切符すら…逃した。
悔しいのはそればかりじゃない。
輝くチームメイトの笑顔に……
私は素直に喜ぶことができなかったから。
私は、トラックの真ん中のレーンに立ち……
真っすぐにゴールを見据えた。
県高校陸上競技大会。
女子100m走決勝の舞台。
「第〇レーン、〇〇高校、上原柚。」
私は大きく手を挙げて……
拳を握る。
ギュッ
ギュッ
ギュッ……
3回、ありったけの力を込めて。
緊張を解く…おまじない。
ピストルの音と、ほぼ同時に……
私はスタートを切った。
会心のスタート!
身体が…
軽い。
練習の成果かな…。
足が上がる。
私の視界に入ってくる者はいない。
一人で………風を切って駆け抜けていく。
…が、
『ビリッ……』
何かが破けるような…、
もし音がしたとするなら、そういう音だった気がする。
突然襲ったふくらはぎの異変に……
体重を支えることができない。
ゴールまであと数メートルなのに……
ゆっくりと身体が崩れ落ちる。
その時見た情景は……
まるで、スローモーションだった。
選手たちの後ろ姿が……
私の先を走る。
耳元に……
仲間の悲鳴に近い叫び声。
一体何が起きたのか……
わからなくもない。
それでも私は……
立ち上がる。
左足が痛くて…
地面につくことができない。
ゆっくりと…
大きく腕を振り、右足一本で……
最後の力を振り絞った。
.
靭帯損傷。
…コーチの見解。
それでも私は病院に向かうのを拒否し続けて……
仲間の戦いの行方を見守る。
結果……
6位入賞を果たしたチームメイトは多く、無事私達の高校は……
二年連続、総合優勝を果たした。
一度手放した優勝杯と優勝旗。
そして、県知事杯を授与され……
華々しい結果を残したのだった。
顧問の車に乗せられて……
整形外科へと向かう。
揺れる車の中で……
涙が一筋、伝っていた。
全国大会はおろか…、
東北大会への切符すら…逃した。
悔しいのはそればかりじゃない。
輝くチームメイトの笑顔に……
私は素直に喜ぶことができなかったから。