As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
ゆっくりと……
顔だけ斜め後ろに振り返り、
私は君に………
キスをする。
そっと触れるだけの……
不確かなキス。
「………おっ、おやすみなさいッ!!」
中道の身体を突き放して……
私は、一目散に逃げる。
残された中道は……
一体どんな顔してる?
「…ただいま~!今日はご飯いらないから!」
リビングでくつろぐ結に断って、
2階への階段を駆けのぼり……
そのまま、ベッドにダイブ!
毛布にからまってからまって……、
ものすごい羞恥心と格闘する。
やってしまった。
催促されたとはいえ……、
自分から!
しばらくそうしていると。
トントンっとドアをノックする音が聞こえた。
私はピタリと動きを止めて……
一度、身なりを整える。
「……あいてるよー、どうぞ?」
ちょこんとベッドに正座すると……
「……柚、お疲れ。」
ドアの隙間から、結が顔を覗かせた。
「中入ったら?」
「…ううん、柚疲れてるだろうから…、ここでいいよ。」
「…………?」
「…今日は……、ありがとうね。あの後もさ、大丈夫だったよ。こんな楽しい一日……久しぶりだった。」
「良かったね。本当…、よかった。」
「……うん、柚のおかげでね。それでね、柚はどうだったかな……、なんて。」
「…私?私も………」
ぼわんと真っ先にうつるのは………奴の顔。
「…………た、楽しかったねぇ!」
ドギマギしながらの……
返事。
「……もしかして、何かあった?」
「……はいっ?!」
「中道くんと。」
「……いや…、いやいや…ありませんよ、何にも!」
「ふ~ん、そっか。……良かったね。じゃあ…、おやすみっ。」
「……。おやすみ。」
パタンと…ドアが閉まる。
『良かったね』って……。
バレバレだった?!
それでも……結の言葉に刺なんてなくて、心からの言葉を…… 私に掛けてくれた。