As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「……。残念。聞こえねーな。」
「……はあ?」
ふと、顔を上げると。
「……ずるい。」
中道は。
何ともあどけない顔で……笑っていた。
「…あ?…この口か、んな馬鹿を語るのは。」
奴は私の頬を摘んで……
びよ~んと引き伸ばす。
「……らって、きほへなひって言うんらもん。(だって、聞こえないって言うんだもん)」
「やっぱり……、ちゃんと顔合わせて聞きたいじゃん?」
そう言って……
奴は私の両肩に、手を掛ける。
いざ面と向かうと、気恥ずかしいやら、何やら……。
でも。
目を逸らしたら……、負けだ。
「三度目の正直だからね。もう…、言わないよ?」
「ん。わかってる。」
ああ……、結局私は……
この人には敵わないんだ。
わかっていても、
それが嬉しくて……。
「中道が……好き。だから。中道の気持ちを教えてください。」
意地も、
プライドも……、
もう……いらない。
純粋に……、
君がスキ。
「……よくできました。」
ずっと瞳を逸らさず聞いていた中道は、うんうんと頷いて……。
肩からパッと手を離した。
おや……?
返事は……?
「…ややこしくなる前に…ちゃんとそう言ってれば良かったのに。そしたら…、アイツに手を出させなかったんだけどな。」
「…………。」
「……俺も甘かったな。」
「………?」
「悔しいけど……、俺なんか…、もっと好き。」
「…………!」
「…だから簡単に信じるし、つい甘やかしたりする。」
「………中道……。」
中道はうなじに手をやって。
視線を下に向けて……
笑った。
「……俺がもうちょい強引に奪ってれば…、柚を傷つけずに済んだのかもしれない。……ごめん。」