As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
女子の悲鳴にも似た甲高い声と、
男子が盛り上がる声とが交差して……
一気に賑やかになった教室。
その後方に……、
一人だけ、席も立たずに真っ直ぐに私を見つめる瞳。
目が合った瞬間に……
まるでそこだけが時間が止まったかのように……。
私は、ただただその目にとらわれる。
蔑むような瞳は……
いつもよりも、数段冷たくて。
何かを訴えようとしているのか、はたまた深い意味はないのか、理解できぬまま。
その人…、三井くんは、先に目を逸らした。
それから…、そのまま沈黙を貫いたかと思うと、誰に気づかれることもなく……、
静かにその場を去って行った。
「……。上原……、どうした?」
誰よりも早く…、私の異変に気づいたのは……
中道だった。
「…顔色悪い。」
ずかずかと私に近寄って。
顔を覗き込む。
「………。なんでもない。ダイジョーブ。」
奴のこの行動が……、周囲の冷やかしのタネとなった。
「……うるせーな。」
中道が……、
苛立った様子で、周囲の生徒を睨みつけた。
見たこともないような奴の姿に……、皆一斉に押し黙る。
「……上原…、行くぞ。」
そのまま私の腕を掴んで、二人の鞄を手に取ると……
「…じゃ。俺らはこれで。」
フォローのつもりなのか、いつもの愛想の良さをしっかりと振り撒いてから……
教室を、後にした。