As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「……あ~あ……。」
私はため息ついて……
仲間達の練習風景を眺める。
運動は禁止。
だから…
部活は毎日見学。
初めて感じる焦燥感……。
東北大会出場を決めた篠塚先輩の走りを……
ぼうっと見つめる。
もしかしたら私が今その立場にいて……、
あんな感じで、爽やかな汗を流していたのかな……。
「柚。お前、今日はもう帰れ。」
「…え?」
「ウロウロ歩き回っちゃ治るもんも治らないだろ。」
「…でも、ウズウズするんです。座っているのは苦痛だし…。」
「…だから、帰れって言ってるんだ。おまえは有望株なんだから…、完治してもらわないと困る。」
「……嫌です。」
「これは…命令だ。」
顧問が私を睨みつけた。
「…は~い。」
こんなことなら…、
おとなしくしてれば良かった。
ただ人が走っているだけでも…
気づくことがある。
例えば、スタート。
篠塚先輩はスタート直後に顎が上がる癖がある。
頭を前に突き出すような……
そんなスタートだったら、もっと風の抵抗は受けないのではないだろうか……。
私はどんなスタートをしてる?
…そう考えると……
自分の中でイメージができる。
仕方なく、置いていた鞄をひょいっと持ち上げて……
私はグランドを後にした。
.
空は茜色。
幻想的なその世界に…
私は思わず、足を止めた。
『カキーン…』
耳に届く金属音。
「……おっ。やってるなあ…。」
すぐそこに、小学校のグランド。
まだあどけない表情の少年達が……
必死にボールに食らいついている。
野球のスポーツ少年団だ。
「…集合っ!!」
一人の少年の声に……
外野やボール拾いをしていた子供達が必死にホーム側へと走って行った。
「お願いします!」
「「お願いしますッ!!」」
号令に従い……
深々と頭を下げる。
「う~ん、青春だなあ…。」
その姿の微笑ましさに…
私は思わず笑みをこぼす。
そして…
また、この帰り道を歩み始めた。