As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
『未来』…?
以前の結とは見違えるくらいに、キラキラとした瞳。溢れ出す自信。
これは…、一体何…?
「恋に翻弄されて…自分を見失っている。あの、走っている時みたいに……怪我をして苦しんだ時みたいに、夢中で駆け抜けて欲しいのに……。」
「…………。」
「見せ付けて欲しいよ、せめてもの餞別がわりに………。」
「………。」
餞……別…?
「安心して…柚から離れたいの。」
「………エ…?」
「前にも言ったよね、私は…美容師にはならない。フローリストになりたいって。」
「……うん。」
「その為に、これから専門の道へ進むって…決めた。海外で本格的なアレンジメントを学びたいから…いずれは留学してディプロマの資格をとる。智恵美おばさんの恩師がロンドンにいるから…、もう話はつけて貰ったよ。あとは…もっと語学の勉強してビザの申請をして…。まだまだ乗り越えなきゃいけない壁は山程あるけど……、もう、迷いはない。長い道のりかもしれないけど、諦められない。柚が歩む道とは交わることはきっと…もうない。戦う舞台は違うけど……、離れてしまうけど……、それぞれの道で、お互いの存在を高め合う。そういう関係で…ずっといたい。だから、ライバルがそんなんでは…私に張り合いがなくなっちゃう。」
「…………。」
「…悔しくないの?」
「…………!」
「…負けず嫌いな癖に臆病で、たかが恋なんかで己を見失って…。」
「……悔しいよ。」
結の言うことが……、あまりにも正し過ぎて。
頭に……来る。
「いつまでも仲良しごっこなんてしてらんないんだよ。中道くんとだって…これから離れる時が来る。彼だって、彼の道があるんだから。柚がその道の妨げになる可能性だって…あるんだから。」
「……そんなの…嫌だ。」
「でしょう?誰よりも彼を支えてきたアンタなら…言ってる意味わかるよね。」
「…………。」
「たかが高校生の恋愛。先の長い人生の一時の感情で…流されてんじゃないわよ。選ぶのは…二人。一緒にいても、駄目になるような恋愛なら…やめればいい。でも…、離れても、お互いを思い合って…自分の道を全うできるのなら、その先で……必ず交わう時が来る。」