As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「それに…、たまたまリトルの監督がどこかで俺の話聞いたみたいでさ。たまにコーチとして来てくれないかって声掛けてくれた。いつか…、あいつらが甲子園とか行ったら、それはそれで嬉しいし…そう考えたらやり甲斐さえ見出だせた。俺の夢はもうないけど…あいつらに夢を託す感じ?…に、したら…ちょっと頼りない奴らだけどな。」
そう言った中道の瞳には……
夕日が映って小さな灯のようにさえ見えた。
これは……
希望の光?
それとも……
諦めきれない夢への…密かな闘志?
いつの間にか中道は……
私の隣りに並んで歩いていた。
掛ける言葉が見つからなくて、
だけど私の右隣りはなんだか熱くて……
ゆっくり
ゆっくりと……
歩いた。
中道が歩幅を合わせているのがわかる。
波長を合わせるかのように……
無言のまま、不思議な時間が流れる……。
小学生の頃…
毎日この道を歩いて来た。
辛い時も、
嬉しい時も…
泣いてる時も
笑っている時も……
なんの違和感なく、結が隣りにいた。
何故今……
隣りにいる中道に、違和感を感じないのだろう。
「……あ。」
「…ん?」
「私の方が大きい!」
「……は?」
中道は不思議そうに首を傾げた。
「…影だよ。」
「…!ああ…。」
「…いっつも結とこんなことして歩いたなあ…。背丈も同じくらいだったから、お互いの影を比べっこするの。『勝った』『負けた』ってくだらない争いしてさ…。」
「………。」
「…後は……、影踏み。ちっちゃい頃よくしてたなあ……。」
「………。」
「…てか…、ごめん。最近こんな時間に一緒に帰ることなんて滅多にないからさ。つい思い出して…。」
「兄弟っていいよな。……俺もよくしたよ。…兄貴と。」
「………。」
「…いつからだろうな……。その背中がどんどん遠くなって…、今じゃ…その影さえ見えないな。」
「中道……。」
「……ってかお前がそんな顔すんなよ。」
「…だって……。」
「俺が惨めみたいじゃん。」