As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「…ただいま~!」
店に顔だけ覗かせて……
挨拶する。
「…あら、珍しいね。柚の方が早いなんて。」
母が少し驚いていた。
「…結まだ帰ってないんだ?」
「いつもあなたよりちょっと早いくらいかな。」
「…ふ~ん?」
寄り道…?
それとも新しい彼氏…?
「ふ~ん。私は今日部活早退。」
「……?」
「久々に…先にお風呂入ろっと♪」
「コラ、柚。お客様の前で……。」
「は~い、ごめんなさ~い!」
そのまま真っ直ぐ自分の部屋に行くと……
早速部屋着の準備して、
お風呂を掃除して、
それから……
お湯を溜めた。
「…いえい♪久々の一番風呂~!」
ザブンとお湯に飛び込み……
「…ふう~♪」
極楽気分。
「しっかし中道の奴…そんな真面目に悩んでいたとはなあ~…。意外だよなあ……。」
顔にバシャっとお湯をかける。
「…でも……、そんなに簡単に諦められるもんかな……。」
玩具のアヒルをぷかぷかと浮かべて……
人差し指でつつく。
…それに……、お父さんへの当てつけなんて……。
ん?待てよ?お父さんてシニアの監督してるって言わなかった?
じゃあ…それを辞めてこっちに来たってこと?
…中道の為に?
「イヤイヤ、それはないな。」
確執があった息子の為に……
辞めるなんてしないよね。
なら……
中道は、誰とこっちに来たの?
お兄さんは東京だし…。
ああ、お母さんかな。
「…………。」
私……
本当に中道のこと知らないんだな。
大して知った気してたけど……
何も知らない。
でも……
色々話してくれたし、聞けば教えてくれるよね…?
「………はっ!」
私…
今何考えてた?
あいつのことばっかじゃん!
「~…っ。」
ドボン!
今度は頭まで湯に浸かり……
頭の中の「中道」を払拭する。
「…忘れろ、私……。」
自分の中で起こっている変化に……
ついていけなかった。