As Time Goes By ~僕等のかえりみち~









「……じゃあ…。」



分かれ道で……、



君は不意に、足を止めた。





「……え……?」




送って行っては…くれないの?





「……今日一日一緒に居たから…、これ以上一緒にいると別れ難くなりそうだし……。」




「…なら…、ずっと一緒にいようよ。」




馬鹿だな、と……。

自分でも思う。




でも……、今手を離したら…

君が何処かに消えてしまいそうで…。




必死だったんだ。







「………駄目だよ、上原。」




中道は…また、困った顔をする。




「……中道……?」




……違う……。



中道は……



困ってるんじゃあ…ない。




意思の強いその瞳は、何かを訴え掛けるかのようにして…私を見ている。



見ているはずなのに。




口元をぎゅっと結んで……



必死に何かを……



堪えている。






「………中…道?」





ああ……、




この顔は。




あの時だ………。





野球部の県大会。惜敗した野球部員達の姿を見ながら、こんな顔…してた。






彼は………。





「……中道っ!!」





彼は………






「……上原………。」





我に返った彼の頬に……







涙が一筋……つたっていた。











彼は………、泣きたかったんだ……。







「……な…んで?どうして泣くのよ。」




「泣いてない。」


目元を腕で擦ろうとすると……



彼の腕についたブレスレットが、ジャラ…っと音を立てた。




中道はそれを一瞬見つめて…、


それから。



私に…向き直す。










「上原……、好きだよ。」








寒月に照らされた君の笑顔が……



切ないくらいに、綺麗だった。







「……今日は…、ありがとう。これ、大事にするから。」





「……………。」







やがて、ゆっくりと君の手が私の頬を包んで……





そっと触れるだけの…


優しいキスを…落としていく。







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