As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
気がつくと…
いつの間にか、おじさんは…いなくなっていた。
「…あ……。」
聞きそびれてしまった。
おじさんの息子さんは……
今、どうしているのか…。
私は辺りを見渡して……
おじさんの姿を探す。
あちこち探して……、
馴染み深い、地元の高校の集団の中に……
ひとり、フィールドを見つめるおじさんの姿があった。
「……おじさん!」
見知っている顔ぶれの中を……
躊躇なく突き進む。
彼は驚いた顔をして…
こちらへと振り返った。
「……ごめんなさい、どうしても聞きたいことがあって…。」
「……何かな。」
「おじさんの息子さんは…、乗り越えることができましたか?」
「…………。さあ…、どうだろう。」
「……この学校の…陸上部なんですよね。」
「ああ。」
「この大会には……?」
「個人では限界があったようだが…、リレーの方で出場するよ。4×400Mで。」
そう言うと……
顔を皺くちゃにして笑った。
「きっと私とも…大会で顔を合わせてますよね。」
「ああ。きっと、何度も。」
「そっか……、そう…だったんだ…。」
お互いに……昨年はでることのできなかった大会。
でも……、
今年は違った。
「……良かったです。」
「……。ありがとう。」
きっと…、おじさんの息子さんとは、色んな大会で沢山顔を合わせてきたことだろう。
お互いに知らなくても……。
同じ想いを抱える者がいる。
それだけで……
心強い気がした。