As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
学校に着くなり…、
野球部員が入れ替わり、立ち替わり…次々と俺の元へと訪れた。
「今日いよいよドラフト会議だな。」
「お前、兄貴から何か聞いてねーの?」
話題の中心は……コレだ。
俺の兄貴はかつて甲子園のヒーローと呼ばれ…、その後、プロにはいかず大学野球で活躍。
このたび、プロ志望届を提出し……、その、動向は各メディアからも注目されていた。
昔の自分なら…、こんな話題を振られたら、即座にキレていたかもしれない。
けれど今は、
「……や、知らん!」
の一点張りで、余裕で対処することができる。
「やっぱアソコとアソコの球団、1位指名してくんじゃねえ?入札抽選じゃ運試しだよなぁ…。」
「でもウェーバー(方式)で希望球団とドンピシャになんてなるかよ。」
勝手な憶測が飛んでいるが…。
俺には一切の情報はナシ。
兄貴は兄貴で……
俺は俺。
互いにそこは弁えて…、会う時には、ただの「兄弟」。
以前はきっとやっかんでいたのだろう。
勝手に劣等感を抱き、ギスギスした間柄だったのが嘘のように……
近頃では、会って話すこともある。
そうなったのも……
奴のおかげだろうけど……。