As Time Goes By ~僕等のかえりみち~





「あとは歩いて帰るから。」




そう断って……、


車から降りる。







そこは……





数ヶ月前まで通っていた…高校。



その、グラウンドの近く。










「……やってるな。」



耳に届いたのは……




バットにボールが当たったであろう……



快音。






「あと…一歩なんだよな。」





元チームメイト達が、白球を追い掛けるその姿を……



昔よりも、


もっともっと、遠くから……



眺める。








奴らもまた……、



あと少し。
あと一歩で…



甲子園への切符を掴むことができた。







「…………。」






野球練習場のフェンス向かいのグラウンド。





そこには、もう……







誰もいなかった。






ひとつ……
溜め息が漏れる。







じわりと目に熱いものが……



込み上げていた。







「……何を…期待してんだ、何を……。」













途方に……暮れる。







視線を落としたそこには……







夕日によってもたらされた、「もう一人の俺」が…、ぽつんと孤独に……






その背丈を伸ばしていた。











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