As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
それは…



私に言ってる?




「……俺も然り。」




……無駄な期待だったわ。



……『期待』…?




「…あ~、アホらし。さっきの子に言っちゃおうかな、携帯持ってること。」



「…マジそれだけは勘弁!」



「どうしよっかな~…」



「待て!……朗報があるっ。」



「…なに?」



「なんと!ここの球場に…DeN〇とヤク〇トの一軍がやって参ります!」



「え。マジ?いつ、いつ?」



「まあ落ち着け。そしてなんと!前売り観戦チケット2枚ゲットしました!」



「うっそ!いいなあ…。…って、ソレただの自慢じゃん。」



「…いーや。お前に譲ってやってもいいぞ。」


「……ほ、ホント?やだなあどうせ裏があるんでしょう?」



「そうかもな。…一枚!…お前にやる。」



「………。」



「…だから…、行こ。」



「…誰が?」



「…お前が。」



「…ちなみに誰と?」



「…俺と。」



「…マジで?」



「マジ、大マジ。」



これは…朗報……



なのか?!




「い、いーよ別に!他に誘う人いるでしょ?ホラ、里中くんとか…」



「野球部は県大会の追い込み。」



「…わかった!じゃあ結は?野球好きだし喜ぶかもっ。それにいつもリトルの練習見に行ってるみたいだし、そのお礼とか……」



「『野球好き』と『野球バカ』では好きの度合いが違うだろ?結ちゃんからお前のバカっぷりは聞いてる。昔野球帽かぶってたらしいな?」



「………それは…そうだけど…。」


二人きりって……




デートみたいじゃん。



「そんなに行きたくない?」



中道は鞄から何やら取り出すと……



私の机の上に、それを置いた。



観戦チケット……。




さあ、柚。よーく考えてみよう!



大好きな野球……
(しかも生……)



一緒に行くのは中道……。



結が知ったら……


傷つく?



いやいや、でもでも私と中道はただの友達だし、野球バカ同士だし……。



ただ…


一緒に見るだけ。



そう……、


私は野球が見たいだけ!



隣はただのサボテン!
こけし!



「……貰ってやってもいいよ。どうせ友達少なくて行く相手いないんだもんね。」




私はそれに手を伸ばした。




「待って。」


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