As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
私は、末永さんに手を振って……、
それから、もう一方の手に握っているソレを…
見つめる。
「良かったあ…、無くしたのかと思った。」
陸上の強化練習に参加していた私。
いつの間にかポケットから落としたそれを拾ってくれたのは……
他校から参加していた、『末永さん』だった。
持ち主を聞き出して…、
先に帰った私を追って。
わざわざ……届けてくれた。
何故、同じ学校のコに預けなかったのかと問うと。
新たな……事実が浮かび上がった。
末永さんは、他校の3年生……。
大学推薦が決まった、短距離ランナー。
何の因果であろうか。
彼こそが……
あの、「おじさん」の…
息子であった。
彼もまた、一方的に私を見知っていたから……。
どうやら、話してみたかったらしい。
同じ短距離走者同士、共通の話題も多くて…、ついつい、話し込んでしまった。
「目元…、そっくりだったな。」
思い出し笑いを浮かべながら…
ふと、坂の上に……
目をやった。
『似てる』と言えば。
……似ていた…気がする。
さっきあそこにいた人の、後ろ姿が…。
他人の空似だろうか…?
あいつがここにいる訳ないのに……。
「……う~ん…、後生大事に抱えてるからかなぁ……?未練がましいか。」
手に持っているのは……
あいつから貰ったブレスレット。
夕日に照らされ……
茜色に輝くソレを。
私はまた……
左腕につける。
君はいなくても、
それはいつまでも……
私を見守っている気がして。
相変わらず、手放すことが……
できずにいた。