As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
彼女はそのまま……
口を接ぐんだ。
きっと、言いづらいのだろう。
俺とは色々あったし、それでも蟠りなく……
こうして、最後まで一緒に過ごしてきたのだから。
相当……、気を遣ってる。
嫌だけど。
心底嫌だけど………
俺の口から言ってやろう。
柚が……
迷わず、先に進めるように。
「……柚……。」
「……ん?」
「元気でな。」
「……うん。佳明も。」
「無茶は…すんなよ。」
「…しないよ。」
「そうかぁ?」
「…しない。佳明みたいに咎めてくれる人がいなくなるからね。」
「………。」
そう言えば…、結ちゃんともバラバラになるんだよな。
「……大丈夫?」
「うん、もう…大丈夫。」
ホントかよ…。
まだ、何にも始まってないだろうに……。
「…なら…安心。」
俺もまた……
騙されたフリも上手くなったもんだ。
「……。来てくれて嬉しかった。本当に……、ありがとう。」
あれ……?
声が…掠れる。
去り際くらい、格好よく……。
「……佳明……?」
「…ごめ…、何でもないから。」
大丈夫じゃないのはどっちだよ。
騙されたフリはできても…騙すことはもう許されないのか?
本当の別れに、怖じけっいて…どうする。
「…………。」
また……
その目。
何もかも…見透かすかのような。
限界……かな。
「……柚。一つだけ…、黙っていたことがある。」
「……え?」
俺は……
自分の鞄の中から、ある物を取り出して…。
柚の手に、握らせる。
「……え……?これ……!」
柚が驚くのも……
無理はない。
何故俺が持っているのかって…思っただろ?
そんなの、こっちが聞きたいっていうのに。