As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
彼女の手に握られているのは……
野球のユニフォームの形をした…キーホルダー。
「…なんで…?なくしたと思ってた。なんで佳明が……。」
「…………。あいつに聞いてくれ。」
「…あいつ?」
「ああ。中道だよ。」
「………!」
柚の顔が……強張る。
だから…言いたくなかったんだよ。
口にすると…いとも簡単に思い出すんだろ?だから自ずと…話題を避けていた。
「…部室の…俺のロッカーに…。あいつのロッカーの鍵が入ってた。初めは鍵を先生に返しておけって意味かと思ったけど…。わざわざ俺んとこに置くくらいだ。意味があるのかと思って開けたら…コレが入ってた。」
「…………。」
「柚のものだって…気づいた。けど…、返せなかった。返したらまた…、思い出すかと思って。お前が必死に忘れようとしてるから……。」
「……ずっと…、持っててくれたの?」
「……うん。今頃で…ゴメン。」
隠し通そうかとも……思った。
でも……、本当は試合放棄などしていなかった奴への……
せめてもの、敬意。
「……ありがとう、佳明……。持っててくれて…ありがとう……!」
卒業式では泣いてなかったのに……ここで泣くかよ。
柚にとっての青春は……
きっと、ずっとずっと…
あいつと共にあったのかもな……。
泣きながら笑う……柚。
なんていう……嬉しそうな顔をするんだ。
これが俺に向けられたなら……なんて…、また、同じ事を繰り返しては駄目だろう。
……成長ねーな、俺も。
「……頑張れよ、柚。……サヨナラ……。」
「……え?何で?」
潤んだ瞳が……
情けない俺の姿を捕らえる。
「え?ちょっと、今一番格好つけたとこなのに……。」
様になんないじゃん!