As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「すごー…、広っ!」
「ホントだ。声…超響くし。」
がらんとした…結の部屋。
その、殺風景さに違和感を感じながら……
最後の段ボールに、テープを貼る。
「間に合った…。あと何分?」
「きっかり30分!」
「……そっか。」
二人共に……
疲労困憊。
なぜならのんびり屋の結は……
いくら言っても聞き耳持たず。
昨日の夕方より、やっと引っ越し作業に取り掛かったのだから。
そう……、もちろん私に泣きついて。
「世話焼けるなあ…。ほんっっとに大丈夫?!」
「大丈夫大丈夫。」
私の心配は他所に、なんとも呑気に…英語の参考書を読みはじめる。
結のバイブルがファッション誌から参考書にかわったのは……
だいぶ前の話だが。
「ゆーうー、ここの訳教えて。」
「…………。」
あまり…成長ナシ。
「智恵美おばさん、首をなが~くして待ってるハズだけど…本っ当に大丈夫?!」
智恵美おばさんとは…、お母さんの妹。
ロンドン在住。
旦那さんと…小さな花屋を営んでいる。
母は「血筋ね」って、結が留学目指していることを快諾したけれど……。
如何せん、この語学力では……無理!
「本腰入れるのはこれからこれから。」
「…………。」
不安要素……満載!!
「……。結~、ちょっとお茶でもしよーよ。あと少ししかいられないんだし。」
「待って、折角今集中して…」
「……いーから!!」
私は本を奪うと……
嫌がる結を、みんなが待つリビングへと……
無理矢理連れ出した。
結は今日…、ひと足先に家を出る。
結はフラワーアレンジ科のある専修大学へ進学。
良い花屋を見つけてバイトしたいから、と……
少し早めの出発となった。
……に、しても……。
往生際が悪すぎる。
いくらしんみりしたくないとはいえ……、
ロクに話さないままなんて、駄目でしょう?!