As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
結の意向で……
父の運転で、結は駅へと向かう。
『見送りはいらない。』
そう言っていたけれど…、友達が来てくれたことには…嬉しさを隠せないようで…。
なかなか車に乗れないのも…きっと、別れ難いから。
名残惜しいのは…みんなも同じ。
しばらくすると……
「結、そろそろ……。」
運転席に乗った父が、困った顔して…
出発の時を知らせた。
「……うん。じゃあ…、みんな。行ってきます。」
……眉を垂らして…
今にも泣きそうな結。
泣くなって…言ってるのに…。
私は結に駆け寄って……、思い切り彼女を抱きしめる。
甘やかすのは、これで最後。
あとは……良きライバルとして、私も…もう泣かないから。
「……頑張れ…、結。」
「……ん。」
一気に……
彼女の瞳から、涙が溢れ出す。
「…帰って来ないつもりでしょう。」
「なんで…わかるの?」
「わかるよ、そんなの。普通は実家に荷物を残すもんだよ。」
「……バレバレかぁ…」
「ツメが甘いんだよ。」
「…………。」
「一人前になるまではね、上原家の敷居は跨がないって決めたの。絶対…甘えちゃうから。」
「……たまにならいいのに…。アンタは言い出したら頑固なんだから。」
「……ごめん。」
「いーよ、最初から…、なんとなく気づいてた。」
「うん……。ねえ…、柚。」
「ん?」
「一つだけ…、私もお節介してもいい?」
「何…?」
「……中道くんから貰ったキーホルダー。あれ、私が中道くんに渡したんだ。」
「……え…。」
「外して制服のポケットに入れてたみたいよ。お母さんがクリーニングに出す時に見つけて…私のだと勘違いしたみたいで…。ホラ、野球見に行ったから。つまりは…、ごめんね。…2年半くらい前の話。」
「…………。」
「中道くん…、ちゃんと持ってたんだね。里中くんに聞いたよ、それを…残して行ったって。」
「…………うん。」