As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「……ぉお?」
目の前には……
香り高きカレーライス。
その、待ちに待った一口目。
それを口に運ぶ途中で…
私は、ポロリ……
と、手に持つスプーンを落とした。
「わ!何してんだよ!」
慌てておしぼりを手渡してきた相手を見ることなく……
私はテレビに釘付けとなる。
「………テレビ……。」
「…あ?」
私は……画面を指差す。
「……ああ。言ってなかったっけ。」
相手は素っ気なく答えて……
呆ける私の、胸元についたカレーを…、ぽんぽんっとおしぼりで…拭き取る。
「……いいじゃん、そんなの。」
そのまま……
私の身体はゆっくりと押し倒されて。
激しいキスを…もたされていく。
「……カレー…、冷めちゃう。折角作ってくれたのに……。」
「……それより…今はこっちのが大事。」
「や……、ちょっと…、佳明っ。」
「……見せつけてるやろう。その方が…柚も燃えるんじゃん?」
「……………。」
「すげー手荒れ……。」
佳明が……私の手の甲を優しく舐める。
小さな痛みと……
温もり。
「……可哀相……。」
なぜ……?
なぜ……こんなにも、胸が痛むのだろう。
テレビから流れる君の声が……
全身に行き届く。
どうして今更……
気づいてしまったの…?